文鎮堂おすすめBOOKS: Stitches

Stitches by David Small
 1945年生まれの、アメリカを代表する絵本作家による自伝的劇画だ。
 “stony midwestern stoicism(頑固な米中西部的禁欲主義)”との解釈もあるが、愛を表現できず、家族に邪険な母。その母を中心とした機能不全家庭に育つ。愛に飢えた少年が繰り返し見た夢は、「不思議の国」にも似た、フロイトなら子宮願望と解釈しそうなものだが、アリスと違うのは扉の向こうが廃墟だったこと。絵の力を感じる印象的な場面のひとつだ。   
  “grow”した首のしこりを14歳になって摘出したら、甲状腺ガンだった。衝撃的なのは、少年の呼吸障害の治療(!)にと、積極的に放射線を照射していたのが、radiologist(放射線医)の父だったこと。
 大手術で大きな見える傷(stitches)と見えない傷も抱えた少年のmemoirは、彼が成長して立派に活躍中と知ってから読みたい。

英文
 In those days we gave any kid born with breathing difficulty  X-Rays.Two-to-four-hundred rads. …I gave you cancer.

私を含め当時の医者は、呼吸に障害を持って生まれた子には、レントゲンを照射していた。200から400ラド。…お前をガンにしてしまったのは、この私だ。

コメントを残す

CAPTCHA