文鎮堂おすすめBOOKS:The Girl with the Dragon Tattoo

 The Girl with the Dragon Tattoo
Stieg Larsson
レクサイル指数:推定1000L

スウェーデン発の世界的ベストセラー、この犯罪スリラーに、久しぶりに寝食忘れて没頭した。本書は3部作の第1部。左翼系経済誌の発行人でもあった作者が、04年に未刊の本3部作を編集者に託したまま、50歳で急死とか、ヒロインはスウェーデンの名作『長靴下のピッピ』の大人になったピッピをイメージしたとか、全米書店でもずっと平積みとか、なにかと気になり読み始めた。
その味わいは……、『羊たちの沈黙』と『華麗なる一族』とJ.グリシャムのfinantial fraud(金融詐欺)事件物のミルフィーユ仕立て。「副菜」に、スウェーデンの風土とセックス観。新鮮で美味である。
金融詐欺告発記事ねつ造という濡れ衣を着せられ、浪人中のジャーナリストが、ある老企業家に伝記執筆の依頼を受ける。しかし依頼の真の目的は、失踪した姪の捜査だった。
そこで調査協力するのがヒロインだ。表題のdragon tattooもそうだが、その他入れ墨とピアスが沢山ついた、痩せた少女体型のバイセクシャル・パンクだ。本作では秘密のベールをかぶっているが、dysfunctional (機能不全の)家庭に育った元不登校児のすね者。これまた謎の「重篤な不良行為」を働いたので、国の後見人がついている。ちょっと暗いが、好奇心の塊で独自な正義感の持ち主というところは、正に「ピッピ」。この調査の天才は、実は天才ハッカーで、おかげで、戦前に遡る猟奇的連続女性殺人事件と企業家一族のおぞましい関わりが明らかになる……。
 困ったことに、事件が片付いても、彼女の全貌は全巻を読まないと分からない!
(2010.8記)

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