「ムニャムニャ」はリードアラウド魔法の呪文@初めての書店

先日は初めて横浜みなとみらいの紀伊國屋書店で、リードアラウドの催しがあった。
定期的になっている場合は「おなじみさん」が混じるので、参加する子どもを包む空気が、多少和んでいる。

しかし、今回のように初めての子どもがほとんどの場合、空気は張りつめている。
リードアラウドでは、まず、この緊張した空気をより和んだものに変えることが重要と考える。

「楽しんでいる時に、学習効果が上がる」ことは、経験的だけでなく科学的にも明らかになっている。
そして楽しさを感じられるのは、リラックスしている時なのである。

—英語なんていう「ちんぷんかんぷん」の文字で書かれた本を読むなんて、自分にはできない

会場や教室に早く着いている、リードアラウドが初めてという緊張した面持ちの子たちに尋ねれば、大抵こういう趣旨のことを言う。
緊張しているのだ。

そこでリードアラウドでは、緊張が吹き飛ぶ呪文のようなもの、
「ムニャムニャ」を紹介する。
リードアラウドの4つある約束のうちの1つ、「読めないところはムニャムニャですます」の「ムニャムニャ」である。

こうわたしが会場や教室で言うと、何人かの大人の頭の中にアドレナリンが放出され、「何を不真面目な」と「きっ」と硬直するのを感じる。
—まあまあ、そうムキにならないで。Relax、relax、結果を見て下さいよ。
と、わたし。

一部の大人がそうなっている時に、多くの子どもの顔は「ふにゃ〜」とリラックスするか、「?」顔になる。
そして、その約束を絵本その物を使って、デモンストレーションし終わるころには、「?」顔がほとんど消えて、みんなが「ふにゃ〜」、笑顔も浮かび出す。

この日も、そうだった。
指導者として、この変化を見られた時に、幸せな気持ちになる。

「ムニャムニャ」混じりの子どもたちと読んだあとに、ひとりひとりに読ませるが、ここでもうひとつ、リードアラウドが大切にしていることを実行する。

それは「助け舟を出す」こと。
日本の子どもは特別に、恥をかくのを嫌がる。
だから、恥をかいたと感じさせないよう、「手伝うよ」と言って自信がなさそうな子(ほとんど)と、指導者が声をかぶせるように一緒に読むのだ。
「先生が一緒に読むから」と小声で伝えるだけで、本当にほっとした顔をする。

「ムニャムニャ」混じりでもよくて、先生も一緒に読む。
これを子どもたちが実感するだけで、緊張がとけて、次第に会や授業が相互的、対話的になるから不思議。

おまけにこの「呪文」、会や授業が終わる頃には聞かれなくなってしまうことも多い。
少なくとも、その場では読めるようになるのだ。

そして、それを定着させるのに、リードアラウド4つ目の約束が必要になる。

緊張が緩んで、楽しさが醸し出された頃、そう、ちょうど1冊を読み終わった頃だ。
指導者は演技過剰気味に、darkで、おどろおどろしい声を使ってこう言う。
「最後の約束!24時間以内に、家のだれかに読んであげなければならない!」

この時の、子どもの反応も楽しい。
一応、その声に驚いて、困ったような顔をする。
そして素直に、真剣に誰に読もうか考える。
それを見守る大人たちの顔も、すっかりリラックスして笑顔だ。

この日の横浜の会も、和んだ空気に包まれた……。
いい会を準備してくれた書店のみなさんに、本当に感謝。
書店が持ついい空気、その書店の伝統にも感謝。

読了後の質疑応答も、実に積極的で真剣だった。
なるほどと思う質問が続いた。
どうか、みなさんにわたしの応答が、そして会が有意義なものでしたように。

ちなみに、使用した絵本は、今や初心者用リードアラウドの定番、Cat the Cat, Who Is That? By Mo Willems.

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