英語絵本を老婦人たちと読む

世田谷の高齢者施設で、月に1回、英語絵本講読会を開いている。
ボランティアである。
参加者は、戦争中に女学生だったという婦人たち3人。
一番年長なAさんは、「鬼畜英米」になった頃に繰り上げで女子大の英文科を卒業したので、最もしっかり英語の勉強ができた。
他のふたりは、2〜3歳年下で、英語の勉強をしっかりする前に、「敵性語」として英語が禁止された世代で、英語にニガ手意識がある。
とは言え、当時の女子大生である。
エリートで、教養が高く、シャープだ。
こちらも予習が欠かせない。

Grandfather’s Journeyから始めて、多分5冊目になる本、Iktomi and the Buffalo Skull  を、先日読み始めた。

アメリカ先住民スー族の伝承ユーモア話で、「かぶきもの」であるいい年の男、Iktomiのヘマが語られるシリーズからの1冊だ。
妻がいる身なのに、ある日、めかしこんで若い女の子にちょっかい出しに、隣村まで出かけるのだが……。
ユーモラスな話の中に、先住民としてのあるべき姿が、教訓として語られる。

文字を持たなかった先住民が、近代化にともない、子孫に伝承話を語り伝える機会を失って、これら独自の文化が失なわれるのを長老たち危惧し始めたころ、ちょうどその文化に興味を向けていた欧米の民俗学、人類学の学者たちが、長老たちから話を採取し、記録した話のひとつだという。

3人の婦人たちが、口を揃えて
「今までの本のなかで、いちばん面白い」
とおっしゃる。
もちろん、わたしは好きな本なのので、これまで絵本のメイン・ターゲットの子どもたちに勧めて来たが、日本の子どもたちにはちっとも売れなかった。
その本が、やっと日の目を見た……。

「絵もとってもきれい!」
ひとりが、目を輝かせて言った。
「ほんとうに!」
他のふたりも、力を込めた。

本は、こういうことが起こるから凄い。

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