英語絵本と読み手の表現力

英語教育識者たちに混じっての座談会で、「英語絵本がなぜいいか」など、ご一緒に話をさせていただいた。

その席で、初級向け絵本のおすすめとして、Rosie’s WalkYo! Yes? を挙げた。
ご出席の田中茂範先生は、ちょうど英語の前置詞について、「イメージを認知して学ばないと使えない、そのために絵本という状況がセットになったしかけがいい」というお話をなさった後だったので、まさにその前置詞が印象的なRosie’s Walkに、感心なさっていた。

また、Yo! Yes? を1年前に読んだ1年生が2年生になったこの新学期に、わたしに再会したときに「Yo!」と挨拶してきた話をしたら、「絵本で読んだことは、子どもの思いがけない記憶に残る」とお話された吉田研作先生が、深く頷かれた。
そして、とても重要なポイント、実はわたしがこの日に避けていたある点をズバリと指摘なさった。
「でも、その本(Yo! Yes?)を読んで本当に理解させるには、かなりの表現力が必要だね」。

図星!
そうなのだ、でも、なかなか難しく、その説明が長くなるので言及するのを避けていたのである。
表現力を付けるのはちょっと指導を受けることも必要であるし、すぐにはうまくならない。
だからワークショップをやっているのである。
日本語の説明、または英語でも説明的なことを極力避けて、その絵本を、文学、芸術としてズドンと子どもに分からせることが、楽しさに繋がる。
そのためには、指導者が表現力をつけないといけない。

ある本をどう読むかの知識を得るのは、単発でもワークショップに参加すれば学べるだろう。
だが、優れた表現力はすぐにはつかない。
頭で分かっても、身体がついてくるのが遅い。

これまでの指導者指導経験だと、まず1年で、難しさを知る。
2年目で、ときどきいい表現が出る。
3年目で、平均してだいたい、いい表現が出る。

「ワークショップを単発でも受けられますか」というご質問をよく受ける。
答えは、YES、そしてwelcome。

リードアラウドがやろうとしているものを、実際に見て、その日の課題書の読み方を実際に練習し、自分のなかの課題をはっきりさせる。
これでも、その後に大きな違いが出る可能性がある。

または、目指す所が違うと認識を新たにするかも知れない。
でもそこで、英語絵本で子どもにいい影響を与えようと思うその人の心の中に、
さらに真摯な部分が広がるだろう。

英語絵本を楽しませるのは、一種の芸のような気がしている。
その「芸」の頂はずいぶん高いところにあるが、そこを目指して、絵本のリードアラウドの「芸」を、みなさんと磨いていきたい。
ただ、英語指導者が舞台俳優レベルの芸に達しようと悲壮になる必要はない。
表現力と指導力のふたつ合わした力で、わたしたちは勝負できるのだから。

これまで、あまり表現力について意識してこなかった英語指導者が、ひとりでも多く、英語絵本を読む表現力を磨き、そうすることで、ひとりでも多くの本好き、英語好きの子どもを増やせたら、と思う。

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