最高の機内放送

これまで日本国内線の機内放送の英語についてなど、書いたことがあった。
今回は、ポートランドーシアトル間のアメリカ国内シャトル便での、最近の経験について。

こんなに乗客がよく聞いた機内放送、というか緊急時の酸素マスクなどなどの説明は、これまでのわたしの経験ではないかも。
ベテランの女性、台本はもちろんなく、マイクに向ってその場でしていた。本来は聞く人もほとんどなく、機械的に言うのがよくあるケースだが、この日のはまるで違った。
それは、人生の先輩が語る人生訓のようで、聞き入ってしまった。

「この機では、酸素マスク、これです。あなたの真上から落ちてこないのですよ。ここ、中央通路の天井から、ほら、こう下りてくる……。まずそれを、あなた自身が、こう首をここに通してつけて下さいね、いくら小さい子をつれていても自身が先、いいですね」などなど。

何が違うのか。
声?それもある。口先で出しているのではなく、奥から出ている。
聞かせる声になっている。
いいまわし?気持ち?
言葉ひとつひとつに何か、イメージというか、色や空気のようなものがある。

この日、この機に何かが起こったら……。
「海上だったら、クッションをとって浮きのように使います。地上だったら」などと語られて、それがありありと頭に浮かんで、ちょっと心配になってしまった。
これはありがたくないかも知れないが、現実的に考えさせてくれた。
「あとは、わたしたちが誘導しますから、それをお待ち下さい」と頼っていいんだな、と思わせる声も、ちゃんと続く。

「(名優、名声優でもあった)オーソン・ウェルズは、電話帳さえ興味深く聴かせることが出来た」との言い伝えがある。
ああ、こういうことなんだ、と、今日の機内放送で、なんだか想像ついた。

この機にこの日、何かが起こっても、きっとみんながよく緊急時のことが頭に入っていたので、混乱は少なかっただろうと思う。
コミュニケーション力の大切さってこれ?
同じことを言っても、こうして生死を分ける違いが出る場面もあるのかも……。

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