日本の「英会話」

地下鉄に乗っていたら、感動的な広告を見た。

「部長の山本は間もなく戻りますので、そこに座ってろ」

とあり、行儀の良さそうな会社秘書の写真。
ある老舗の英会話学校の広告だった。

そうなんです!
この広告自体は、その英会話学校なら、こんな英語を話す人にはしませんよ、というものだが、こういう英語、案外多い。

「英語が話せる」日本人でも、英語のニュアンスが、上記の日本語みたいに聞こえるときがあって、「ヒエッ〜」とこちらが冷や汗をかいてしまう。

わたしも、まだまだのところがあるが、耳はいいつもり。
ヘンなのがよく分かる。
上記の場合は、Please have a seat とか言うべきところを、この秘書は恐らくsit down と言ったのだろう。

「座りなさい」= sit down とだけ習って、それ1本で通用してしまうのが、日本のなかでの「英会話」。
この弊害が、小学校の英語授業を日本人教師が「全部英語でする」ことになったら、さらに大きくなりそうな予感がする。

婉曲表現が落ち、直喩的で、命令的に聞こえる英語を使う傾向はもう見えている。
1つの言い方だけでなく、10の言い方を使って、そのうちのいくつかが生徒の耳に残るようにするのが理想だが、なにせ教師にも生徒にも英語のインプットが少ない。

日本で英語教師をやっていると、英語ネイティブ話者でさえ、ヘンな英語になってくる。
簡単な語彙が多くなり、直喩、命令口調。
これは第二言語学の研究でも、報告されていた。

こういう「英会話」の弊害を避けるには、インプットを増やすこと。
日本在住の英語話者は、日本人の「英会話」に慣れていて、なかなか問題点を指摘してくれないから、やはり英語圏で英語に触れることがいい。
でもそれも難しいので、現実的なのでは、映画をじゃんじゃん見る手がある。
しかし一番は、本を、それも英語ネイティブ向けに書かれた本(よくある第2言語として英語を学ぶ人用の「ESLリーダー」ではなく)を読むことだろう。
ハードルが高い分、得る物が多く、大きい。

ということで、リードアラウドで多くの名作絵本を学ぶことは、インプットを増やすと言う意味でも、英語学習の王道を行っている……。

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