Three Elderly Ladiesと英語絵本

 月に1度、シニアホームで英語の絵本を読解するボランティアを続けている。
ここ約1年は、認知などの生涯がまったくない3人の婦人と、Old Turtle という哲学的示唆に富む絵本を、内容を味わいつつ音読している。

 この御3方とも、舌をまくほどシャープで学習意欲満々。
中でもAさん、翻訳がすらすら出て来る「翻訳マシーン」。
「あやしい者ではございません」などと、なかなか本当のことをお話にならなかったが、とうとう先日はその力のわけを「白状」した。

 大正生まれのAさん、敵性語と言われた英語をちゃんと大学で学べた戦前最後の世代である。それ以降は、敗戦まで英語は学べなくなった。
その英文科で優秀だったAさん、教授からの紹介で、日本軍に捕まったPOW(捕虜)が書く故郷への手紙を、差し障りのない文面に書き直すボランティアをしていたのだそうである。
そして、敵性語と言われても、内緒で英語を習わせる知識人家庭の子女の家庭教師として教えていた。

……それから戦後。
ある日、進駐軍のラジオ放送を聞いていたAさん、「英語を使える日本人募集。丸の内に集合!」というのを聞いたのだ。

彼女は「丸の内のどこかも確認しないまま、その日にただ丸の内にぼんやり」立っていた。
すると外国人の男性が外車に乗ってすっとよってきて、
「仕事が欲しいのか」。

そうだというと、そのまま車に乗る様に言われ、不用心にもついて行った先が、カナダ公館だった……。
以来、公館の翻訳官になったということだった。

そりゃ、そりゃ……あたり前だ。(ドキッ!わたし、粗相はなかったでしょうか)

そしてこの日は、
「愛国少女になんでなってしまったのでしょう」の話や、
「昭和20年5月25日の大空襲で、明治神宮に逃げた」話などなど、
御3方の戦争経験を聞けた、興味深い日となった。
Old Turtle and the Broken Truth
『Old Turtle and the Broken Truth』

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