上海万博に行った

上海万博の北朝鮮パビリオンにも驚いたが、中国版「農協」パワーにも驚いた。

北朝鮮パビリオンは、待ち時間がなさそうだし、怖いもの見たさで一番に入った。
「えっ」。
世界の、5年に1度の万博に、このパビリオン?
「これでも、中国政府、たくさん助けたヨ」
と、中身がからっぽで文化祭程度の見かけしかない展示を見て、上海人の友人は言う。
「でも、みやげもの屋のお姉さん。化粧も薄いのにホント、奇麗のお姉さんネ」。
これには同感。
クールビューティが、文字通り、このスカスカのパビリオンに花を添えていた。

でもなによりも驚いたのは、会場をつなぐフェリーを待っていた時だ。
船はどんどん来るというのに、人が多いせいで、どんどん待ち合い所が人でふくれあがる。
そこで並んで待っているのに、好きなところに割って入る人が何人もいる。
警備員も何もいわず、放送もない。

「はあっ?」
わたしがそう「表現豊かに」(リードアラウドのお約束どおり)不快感を分かりやすく言っても、入ってくる。
そのひとり、肩でぐいぐい前に割り込んで行くおじさんがいた。
とうとうその肩をつかんで、わたしは言った。

「あの、ちょいと。おじさん、今、列の外から入ったよね。わたしたち、並んでるんですけど?」
もちろん日本語だから、おじさんはしっかりわたしを無視する。
そうしたら、同じ団体の他のおじさんが見かねたのかなんだか、わたしの友人になまった標準語、地方の農民らしい言い方でこう言ったそうだ。
「うちら、地方の者はな、都会のルールなんぞ知らねえさ」

もっと恐ろしいのは、フェリーが着いて、待っている列の先頭のロープが外されたときだった。
こぼれんばかりにふくれあがった群集が、ウオーと喚声をあげて走る、走る。
エキストラによるコジラ映画の脱出の場面、またはハリウッド映画のローマの戦闘場面だ。いや、百姓一揆か。

老いも若きも、男女問わず、船まで猛ダッシュ。
みんながわたしたちをどんどん追い越して、船に入って行く。
ダーっダーっ。
人々が超真顔で一目散で走っている。
怖い。
パニックシーンの真ん中に入ってしまったようで、パニックしそうだ。

これは、満州から日本へ戻る最後の船じゃないゾ。
たかが、1時間に何本も往復している渡し船だゾ。
もちろん、だれもそんなこと聞いてくれない。

生存競争の予行練習のような、上海万博だった。
China : The Culture (The Lands, Peoples, and the Cultures Series)

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