他人との距離

ロサンジェルスに住んでいた頃は、犯罪率も高く人心が荒れていると感じたこともあって、ここ約10年、アメリカといえばほっとするポートランドに戻ることにしている。

田舎でも大都会でもない「中都会」、IT関連の企業も多くインテリの割合が高い。
民主党支持者の多いリベラルな街としても有名だ。
本屋さんとオーガニックマーケット、コーヒー屋が繁盛しているのも、そんなわけから。

みんなが親切なお隣さんみたいなところも、ほっとする一因だ。
他人との距離の取り方が、東京とは違う。

昨日はまたPowell’s Booksへ行ったが、空調の関係かなにかで埃を吸ったようで、咳き込んだ。
人に迷惑だと思い、化粧室の個室に入り、思う存分咳をしていた。
すると
「どうしましたか?店の人に助けを呼びましょうか」
の声。
すぐには、自分のことだとぴんとこなかったが、ああ!
確かに咳き込み方からすると、かなり気分が悪い人に聞こえたのだろう。
東京で、誰かが化粧室の個室でこう咳き込んでいても、なかなか声はかからない。
声をかけたら助かることも多いだろう。

化粧室で感心してから、児童書のコーナーに戻り、本を見ていると
「ねえ、あなたは身長どのくらい?」
と急にご婦人が声をかけて来た。
えーっとフィートで言うと……、と反射的に考えたが、ちょっと待てよ。
見知らぬわたしの身長を、本当に知りたいのではないだろう。

見るとその婦人は、明らかにわたしより背が低い。
「あっ、高いところの本がとりたいのですね」
とわたし。
待ってましたとばかりに、あれとこれとそれ……遠慮なくの5,6冊のご指定。
婦人もにこにこ、それを見てわたしもにこだ。
東京で、こういうことあんまりないなあ。

そして、今日はちょっと驚いた。
車が歩道にすーっと寄って来たと思ったら、窓があき顔を出した青年が
「ちょっと!ぼくの郵便物、そこのポストに入れていただけませんか?」
と、ポストに近づいていた女性に声をかけた。
一応、大変丁寧な言葉遣いで。
「えーわたし?急いでいるけど……しょうがないわね」
肩をすくめながらも、女性は郵便物を男性から受け取りポストへ。

これは良し悪し?
生きやすいといえば、生きやすい社会なのかも。

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