「先生、今日はNo, David!ですよ」その2

(その1からのつづき)
 声や動きに加え、指導者の持つ情報というのも求心力である。45分のリードアラウドを子どもたちに飽きさせないでやるのには、少なくとも2時間以上の準備がいる。しかし、この日、30分しか出来なかったEさんが、ふともらした言葉がこれ。
「読み聞かせなら、これで出来るんですけど」。

No! No! No! わたしたちはリードアラウド!読み聞かせではない。
ぐいぐいと生徒を、本のなかに引き込む。参加させ、「英語っておもしろい」とちょっとでも思ってもらう。部分的にでも、「ホ〜!」と感心ような読みが出来るようになってもらう。何らかのお役立ち英語圏文化情報を持ち帰ってもらうのだ。

「子ども」とみくびってはいけない。こちらが「10知っていて、その1を教えている」のか「1知っていて1教えている」のか、感じ取ってしまう。ぜひ「10」で臨みたい。

じっくり準備をすると、本の中でたくさんの発見をする。その発見が、自分の読み方に反映してくる。発見した内容が、演技に必要な情報になる。叱り始め(何時頃?)から、どんな時間がデービッドとママに流れ(空腹だった?学校でイヤなことがあった?隣人にデービッドのいたずらをとがめられた?)、疲れやあきらめ、もしかしたらクライマーズハイのような状態、そしてたまらなく愛しくなった心など、実際の人間としての心もように想像を及ばせることができる。

デービッドが食事中にジャガイモやインゲンで人を作ったイラストを見て、クラスのある生徒がつぶやいた「これって、芸術的だったりして?」。素晴らしいつぶやき!これを拾い上げて、「じゃ、ママもそう思ったかもしれない。叱り方も変わってくるよね。どうなるかな」と、深い表現にチャレンジする機会になるだろう。

ページを開け、イラストを見るのもそこそこに、印字されている文字を読み下すだけなら、もうすぐ音声自動読み上げ装置にとって代わられる。生身の人間であるわたしたち指導者が、いろいろ反応をしてくれる楽しい若い人間の前に立つのだ。相手の反応を、こちらの知恵と最高の反射力で、読んでいる本と結びつけ投げ返す。英語の絵本を使った、高等な芸みたいだ。芸は磨かなければいけない。

また、日本の子どもたちの反応をすばやくキャッチして、彼らのツボに投げ返すことができるのは、日本を知っていて英語をそれなりに使えるわたしたちだからこそだ。英語を母国語としない子どもに合った、とてもオリジナルで新しい方法かもしれない。

ここでのリードアラウド参加の生徒たちも、やっと慣れ始めた。打ち解けてきたので、いい方向にもっていけそうな予感がする。
実習生のみなさん、良い感じで順番にバトンが回って行きますよ!よろしく。
No, David!
『No, David!』

「「先生、今日はNo, David!ですよ」その2」への2件のフィードバック

  1. Eです より:

    先生 たいへん ハラハラさせて 申し訳ありませんでした・・・
    最高の学びの場を 逃して がっくりしております。

    毎日同じ本・・・よいアドバイスを ありがとうございます。
    やってみます。

    >日本の子どもたちの反応をすばやくキャッチして、
    >彼らのツボに投げ返すことができるのは、日本を知っていて
    >英語をそれなりに使えるわたしたちだからこそだ。
    >英語を母国語としない子どもに合った、とてもオリジナルで
    >新しい方法かもしれない。

    そのとおりだと思います。
     今年も残すところ わずか・・・今年のうちにリードアラウドに
     出会えて よかったです。
    年内に1冊でいいから、これぞ、というのを作りたいです・・・

     ありがとうございました!

  2. oshima より:

    ちょっと東北っぽいわたしは、どきどきしましたが、Eさんは南国帰りだったからなのか、個性なのか、心が高揚するいいノリです。打ち出したらいい個性ですね!南国の空気、おみやげ、ありがとうございました。

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