NYタイムズでReading Workshopの記事を読んだ

ポートランドでは、OREGONIANというローカル紙と、国際記事とアメリカ全体をながめるためにNYタイムズを、なるべく読むようにしている。

日本も似た傾向が出ているようだが、アメリカではもともと新聞を定期購読する人が少なかった。気になる事件があるときとか、求人広告など必要な情報が入っているときに、スーパーマーケットなどで買っている人も比較的多い。また、日曜版(6ドル!)だけは欠かさず、という人がかなりいるため、マンガやプレイガイドだけでなく、社説や文化などのトレンドのルポなどにも力を入れていて、読むところが多い。

たいていの学校の夏休み最後の日曜日、8月30日付けのNYタイムズは、学齢期の子ども関連のニュースが目を引いた。テッド(エドワードとは呼ばずたいていこの愛称)・ケネディ議員の葬式が第一面上段だが、下段右側は、Students Get New Reading Assignmentという見出しの囲み記事だ。

先日のこのブログでも書いたが、80年代からアメリカでは、子どもたちのReadingの力が落ちることに危機感を持った。たいていの学校で定期的に行う標準テストや、政府の教育省と研究機関が共同調査、Progress In International Reading Literacy Study(PIRLS)という国際的に5年ごとに行われる調査などで、英語力を定期的に、そして客観的に調べ続けている。

記事では、あるNYの学校区で標準テストの点数が上がる傾向が見られた、あるReadingの授業方法を紹介していた。Pick Books You Like、記事の副題がこれだ。

英語の授業といえば、決められた本を一斉に読んで、それについて解釈していくというのが定番だったが、Reading Workshopと名付けられたその方法では、生徒たちに好きな本を選ばせる。これには、教育者たちのいろいろな懸念があった。だがこの方法は、生徒たちの読書への積極性を引き出し、そのおかげで理解をより深め、読書を楽しいと思う子どもを増やした。そして、現実的にいえば、標準英語力テストの点数の上昇との相関が認められたという。

特におもしろいと思ったのは、今まで「必読」として一斉に読ませていた本のリストと、生徒たちが実際に選んだ本のリストの違いだ。あたり前だが、先生が勧めてきたのは古い。それに対して、生徒たちの選書は、NYタイムズの現在のベストセラーリストに載っているものなど新鮮だ。

また、生徒によっては8年生(13歳位)でも、Toni Morrisonを読む子もいるし、反対にCaptain Underpantsシリーズだったりする子もいる。先生はたいへんだろうが、それぞれとその本についてディスカッションをする。その機会に、Captain Underpantsを読んだ生徒には、あまりディスカッションが深まらないことに気付かせ、次はもうすこし内容が深かったり、自分と関連付けられる本を選ぶよう仕向ける……という案配らしい。

このReading Workshopの「トリック」は、読書の動機作りだろう。読む気がすると、読める。自分で選んだのだから、先生に決められた「勉強」みたいではなく、うれしいだろうな、と中学生時代の自分を振り返って思う。読む気がし、おもしろく読めると、もっと読みたくなる。読むペースが上がる。いままでよりも、たくさん読む。知識が増え、読み慣れて来て、読書好きになり、ついでに英語のテストも楽になる……。

リードアラウドに関連して言えば、子どもが読みたいもの、つまりおもしろそうなものは、出来るだけ尊重するべきだろうな、ということ。というか、選書眼として子どもの視点と、本のトレンドというものを捉えていることは大切だろう。動機付けをしなくては!「英語の本を読むのって、おもしろい」と思ってもらうには、先生のパフォーマンスの他に、退屈で芸術性も低い教本(リーダー)ではなく本物の本を選ぶ。それも子どもの目で、おもしろいと思われるものを選ぶ。

「おもしろい」をわかる目は、先生だって子どものときに持っていた。この、本だけでなく、いろいろなものへの好奇心に満ちた目、その目玉やら眼鏡、コンタクトなどなど、の曇りは取り除き続けたいと思う。
Captain Underpants and the Big, Bad Battle of the Bionic Booger Boy, Part 1
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