教育委員会の担当者、リードアラウドを見る!

 ある教育委員会の教育政策担当者が、区立小学校での生徒対象のリードアラウド・ワークショップ(WS)を見て下さった。
 
 先日は教職員対象WSだったが、今回はリードアラウド指導者見習生の研修を兼ねてする、放課後の学童クラブ的な枠でのWSだ。この放課後の枠にピッタリだと、校長の一声で決まった試みで、集まった4~6年生はジロリ、浮かぬ顔。暑かったし、3:45だし、知らない「おばさんたち」だし、David Goes To School『David Goes To School』渡されてもなあ。そんな空気だったが、まあ当然だろう。

 そこに轟き渡る「リードアラウドってね、こういうこと!」というわたしの声。後ろで見ているお役人も、(たぶん)耳をぴくり。この時点での、リードアラウドのポイントは次のふたつ。

1. 声の張り
原始的なことだが、子どもの目を覚まさなければならない。無理なく、張りのある声を出せるようになるには、呼吸法(長く細く息を吐く練習)と毎日の発声(読みの練習)だ。実際にはそんなに大声でなくとも、注目させる空気を持ち込めば、同じ効果がある。

2.楽しくなりそうな雰囲気作り
緊張をやわらげる時間としても、リードアラウドの「約束」説明は大切。柔軟体操のつもりで、なぞりの練習や、なり切り読みの練習、読めなかったらムニャムニャOKという説明を、しつっこめにやる。

この日は、年長生徒が多めだったので、最初、なり切り読みをするのに羞恥心がじゃまをしていた。ここで、こちらが引き下がったらワークショップが楽しくならない。いい表現が引き出せるまで、こちらも引き下がらない。ぱっと花開いたような表現が出たとき、わたしは本当に嬉しくなる。心のきらめきを見たような喜びだろうか。自分では、そのわたしの喜んだ顔が生徒に反映するのだと思っているのだが、一度でもこちらの喜びが生徒に見えると、それから生徒たちは、かなりいい表現をしてくれるようになる。

 後ろの見学者も、つまらなそうに入って来た生徒たちが、生き生きとした表情になるのに気付いたらしい。彼の表情が光った。小学校での英語活動のあり方に、リードアラウドが何か可能性を示せたら嬉しいが、どうだろう。

 さて、「柔軟体操」をわたしが生徒たちとしたあとで、「教育実習」の始まり。声の張りも、先生として大切な「愛嬌」も、信頼感や敬意もわく雰囲気も、デビュー授業とは言えないほどあった。ほっとした。

 ワークショップが進んで行き、何度かわたしが口を挟む場面があった。それには共通する理由がある。その理由とは、3つめのポイントでもあるが、これである。

3. 「勉強臭」を漂わせない
「教える」という使命感が全面に出過ぎると、漏れてしまうのがこの「勉強臭さ」だ。楽しく始まった大人の話も、この匂いがぷんぷんすると、子ども時代のわたしは興ざめしたものだ。勉強がしたくなかったためではない。きっとその大人の子どもを教えようとする仕掛けが単純過ぎるとか、生意気なことを直感したのだろう。代わりに、「教えようとしてないのに、学べる」話は、とても熱心に、敬意を持って聞けた。

 指導者側の心の柔軟体操も必要だと、この頃つくづく思う。教師研修や指導者ワークショップを始めたのは、この必要性を感じてのことでもある。この心を柔らかくする練習が、指導者向けワークショップで中西先生にお願いしているボイス+演技レッスンである。

 さあ、初めてのリードアラウド、教育の専門家はどんな印象を持たれたろう?

ESL用の教本、善し悪し

30年以上たった今でも、鮮明に覚えている英語の本がある。それは中学生のときに「サイドリーダー」として読んだ、オックスフォード大学出版のAround the World in 80 Daysだ。これは、English as a second language(ESL)用に、やさしくそして大幅に短縮して書かれたものだった。中1で英語を始めた生徒には、それでもハードルが高く、単語調べの予習が欠かせなかった。だが、新しいページを開けるたびにワクワクした。英語で書いてあることが、たどたどしいながらも分かっていくのが嘘のようで、苦労はしたが誇らしくも思った。

中学生でも読める英語で書き直された『80日間世界一周』があって、ほんとによかった。原作の力に支えられて、中学生の生意気盛りの頭にも作品への尊敬の念があったように覚えている。無論、原作が英語で読めれば一番だが生徒の力としても、授業としても不可能だった。これがたとえば『Dinosaurs Before Dark (Magic Tree House, No. 1) (Book & CD)
『Dinosaurs Before Dark (Magic Tree House, No. 1) (Book & CD)』
』などMagic Tree HouseシリーズだったりKatie The Kitten Fairy (Rainbow Magic: Pet Fairies 01)
『Katie The Kitten Fairy (Rainbow Magic: Pet Fairies 01)』
など『レインボーマジック』シリーズだったら?と思うのだ。

ウ〜ム。英語圏だったら小学中学年程度の内容である。せいぜい小学5年生までで、終えたい内容だ。逆にいえば、その年の子どもたちにはぴったりの、楽しい本だろう。現実的には、普通の日本の小学生では歯が立たないわけで、英語のレベル的には中学生2,3年だろう。でもそうなると精神年齢が合わない。きっと、わたしが中学生でこれを読んでいても、今でも覚えているなんてことはなかっただろう。

日頃、教本とかリーダーとか、英語教育のために書かれた本に対して、「本物ではない」とか冷淡で、オリジナルを勧めるわたしだ。しかし、こと中学生からの英語に関しては、自分を振り返って見るに、やはり精神年齢のほうを重視した、幼稚と感じない原作に力のある本で、それをやさしい英語で書き直したものがいいかなと思う。

ただ、これが小学生や幼児だと話は別だ。(つづく)

小学校の先生方とリードアラウド!

 渋谷区の小学校の教職員研修で、先生方とリードアラウドをした。使用絵本はDavid Goes To School『David Goes To School』。素晴らしい! いたずら小学生デビッドを先生が叱る場面がたくさん出てくる絵本なので、先生にはもってこいだったせいもあるが、それにしても表現力抜群。時にはおかしくてひっくり返りそうだった。

 興味深かったひとつは、研修前から「英語は苦手」という声があちこちからもれ聞こえ、どことなくおずおずした空気が流れていたこと。なのに読んでもらったら、何をもって苦手と言っていたのかさっぱり分からないほど、すぐにでも英語圏で通用してしまうようなこなれた英語なのである。こちらが求めることを聞いて、すぐにそれに応える。講師にとっては、Dream students(理想の生徒)だ。

 そこで、気づいたことがある。みなさんの苦手意識と現実(できる)のギャップが、日本人らしさというか、日本の文化的特徴かもしれないと。そして現実以上に苦手と思う文化は、奥ゆかしさでもあるのだろうが、どちらかと言えば語学上の成長を邪魔している障害なのではないか。

 でもさすが先生。すぐに自分を客観的に見ることができて、「案外いける」ことを認識した顔つきだったような……。コレなんです! わたしがリードアラウドのワークショップで目指していることのひとつは。つまり、「英語は難しくない」ということに気づき、「楽しい」と思ってもらうこと。楽しければ続けられる。続ければ、みんな必ずうまくなる。

 お世辞ももちろんあるだろうが、先生方から「楽しかった!」という感想をたくさんいただいた。でも実は一番楽しんだのは、わたし。大人、それも先生と呼ばれる人たちが、のりのりで、気持ちのいい表情でせりふを読むのを見ること、聞くことの楽しさといったら! だからわたしも、これからも続けて行こうと思う。そしてきっと、楽しさを実感した先生から、英語を学ぶ楽しさが伝わり始めるゾ。

 先生方、どうもありがとうございました。