リードアラウドと紅白歌合戦:その2

(前回からのつづき)

千の風は、エンヤで吹っ飛んだ。エンヤの歌を、死に際までずっと「聖歌」のように聴いて逝った親類がいたので、長い年月それを聴くのを封印していた。生 中継で彼女が出て、不思議な舞台設定で不思議な顔、音楽、声で歌い、ノックアウトされた。個性という力、その個性の輝き、オーラとはこういうものか。

ジェロさんのママさん登場で、息子のジェロが歌う前からその姿でこちらももらい泣き。ところで紹介が「黒人の〜」というのは、間違っていないか。「アフ リカ系の〜」にしてもらいたい。祖母が日本人で、ジェロは4分の1だけ日本人だという。祖母がアフリカ系アメリカ人と結ばれ、孫のジェロが日本にやってき て演歌歌手になったという。語り尽くせないドラマがあるんだろう。オリジナル曲を歌ったが、若さや初々しさはいいが、まだ出し切ってない「強さ」がありそ うだ。「隠し玉」がもっとあって、うまくなる幅を持っていそうだ。

SPEEDは、見るのがつらかった。戻っていい場合とそうでない場合があるだろうに。TOKIOは、存在感が増した。ジャニーズ系としてではなく、本当 のバンドになれるかも。ドラムスとヴォーカルのかっこよさは抜群だし、ヴォーカルも椎名林檎の不思議な歌をしっかり歌っている。そうそう、見たかったのは テルマちゃん。どんな子かと思っていたら、ほんとにいい子そうで気持ちのいい声。おだやかな笑顔が素晴らしい。これまた「好人物」という個性が際立ってい る例か。ジェロと会話は交わしただろうか。同じアフリカ系の人生を背負い日本語で表現する、数少ない表現者。そこにジョー山中さんが入ったりしたら、何を 話すだろう。

徳永英明の声は不思議だ。声自体が才能のうち。五木ひろしも円熟しつつあり、勉強を続けている人だなあと見直した。森山直太朗は、新方向を見つけたよう で、よい兆し。ただきれいな歌ではない、表現者として難しいものに挑戦する若さが好ましい。同様に、アンジェラ・アキの新方向を垣間見た。熱唱する対象を 失ったら、せっかくのこの歌手の汚れていない「熱」がもったいないので、いつも対象を失わないでいて欲しい。

平原綾香は何者か知らなかったが、「歌唱力のある歌手」として一目をおかれている人らしい。そこそこうまくても、日本の芸能界でおだてられて、伸びどま りしないように。ああ、それから英語の歌詞だということに、しばらく気がつかなかった。なぜ、英語(のつもり)の歌? コブクロというのも、実験的な難し い歌を自分たちで作って歌う挑戦者。まだまだいい歌ができそう。平井堅はそつなくまとまりすぎ?Exileは、おもしろい。スタイリッシュのなかに、極 道っぽさが混じり、独特だ。男のダンスもかっこいいもんだ。

小林幸子はご愛嬌。しっかり歌を聴いてもらえる場ではうまいんだろう。一青は、不思議な感じで情感があふれ、聴かせるひととして成長中。でも、中島美か は、どうしたのだろう。ぬけがら?石川さゆりは、さぞかし演技も、朗読もうまいんだろうなあ。歌の世界をぱっと瞬間的につかみ、観客にそれを見せられる。 芸人だ。SMAPがちょろちょろ出て来て、手紙を読んだり感動すべきコメントを言ったりするが、どれもこれも棒読みだったり空々しかったり、まったく感動 も共感も与えてくれない。学芸会レベル。なのに、頻繁に登場するのはご勘弁を。歌はもちろんのこと、踊りも練習不足?簡単な振り付けにしている?驕るもの は、先がないでしょう?

天童よしみの声は、実につやっぽい。ぴかぴか、きときと。声が本当にいい人だ。森進一の「おふくろさん」は、演技にしても入魂極まり、凄みがあった。絶 唱というのか。しぼって、体を震わせて、あの声、あの顔。歌詞に込める情が、怖いほど。ここまで、わたしに出来たらうれしい。なんだかんだ言っても、森進 一は存在感のある歌手で、「おふくろさん」はその歌手に歌われるべき歌だ。

「いい気になっている感」が、歌のうまさに勝る和田アキ子は、どうしたものか。もっと謙虚だったらいいのにな。氷川きよしの好感度は、会場の空気を変え るほどものらしい。本人が「大トリ」の大役に感極まって泣く姿に、中高年が感動するのもわかる気がする。あとは、表現の幅を出すことで大成するのだろう。

ああ、こうして観ると、実に面白い紅白歌合戦だった。

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