レオ・レオニと絵本

 「あおくんです」で始まる『あおくんときいろちゃん』は、その邦題そのまま、”little blue and little yellow” Little Blue and Little Yellow
『Little Blue and Little Yellow』
という原題の、日本や欧米でロングセラーの絵本。2009年1月からの「指導者向けリードアラウド・ワークショップ」で使う1冊でもある。

 今、その作者Leo Lionniの自伝,Between Worlds(現在版元切れ、Powell’sでusedでみつけた)を読み終わった。1910年生まれ1999年に亡くなったこの人、絵本作家というのはほんの一部で、実は芸術の巨匠だったんだ、という感慨に包まれている。

 英語では「ルネッサンスのひと」という、ダビンチのように何をやっても一流な人を表す言い回しがあるが、リオニはまさに現代のルネサンスのひとだった。オランダ、アムステルダム生まれで、不自由なく使える言葉は、オランダ語、ドイツ語、英語、フランス語、イタリア語。それぞれで、本が書けるほどの力だ。ふ〜、もうこれだけで「天才」。

 父方はイベリア半島起源のSephardic系ユダヤ人で、父は会計士からダイヤモンド商になった人で、母はオランダ人で舞台で活躍したオペラ歌手。本人はスイスの学校から、ジェノバ大学に進み、経済学博士号習得。絵画は独学。オランダの美術館で、レンブラント、フェルメールから、親戚の美術コレクターの叔父ふたりからは、ピカソ、シャガール、ミロなどなど生の絵を目の前にして現代美術を学んだ。

 音楽は、聞いただけですぐに演奏できたらしく、趣味としてアコーディオン、フラメンコ・ギターなどを演奏し、フラメンコも踊ったという。純粋芸術では、油絵と彫刻で個展をひらくプロの作家であり、商業芸術ではスタイリッシュで有名だったオリベッティのAD、グラフィックデザイナーとしても美術館に所蔵される有名作品がかずかず。アメリカの大手広告会社のAD、雑誌FortuneのAD、そしてNYの有名デザイン大学Parsonsのデザイン部長など歴任。

わたしが一番驚いたのは、Parallel Botany(邦題『平行植物』、英語版も翻訳書も版切れ、これもPowell’sでみつけた!)という、奇妙な植物だけを扱った植物学の本も著していたということ。動植物学と芸術というのは、学科的にはかけはなれているようだが、実は「美」というところでは根が同じだ、というひとつの例じゃないだろうか。わたし自身、植物学を志しておきながら、今、なぜか絵本について書いているし……。

 リオニは、「芸術の巨人」または「知の巨人」だった。そのひとが、非常に幸せな思い出に包まれた子ども時代を思い出しながら、晩年に楽しんで作ったという絵本を、改めてちゃんと読んでみようと思う。

 【お知らせ】Leo LionniとMadeline (Puffin Storytime)
『Madeline (Puffin Storytime)』
の作者、そしてWhen You Lunch with the Emporer: The Adventures of Ludwig Bemelmans
『When You Lunch with the Emporer: The Adventures of Ludwig Bemelmans』
などエッセイストとしても有名なLudwig Bemelmansを「対決」させる企画展(大島による企画、監修)が、2月1日より、東京クレヨンハウスで1ヶ月開催されます。現在は「エリック・カール vs. ロバート・サブダ展」。今後1ヶ月おきに2010年まで次々「対決」が続きます。絵本から、歴史や芸術、そして哲学、自分の生き方を考えることにまで広がったら素晴らしいと、この企画を進めています。

コメントを残す

CAPTCHA