深まる「芸」の道:リードアラウドと日本語

 2009年1月から始める、指導者向けリードアラウドのワークショップ、ありがたいことに現在80%の予約がすでに入っている。

 わたしも、ヴォイス・演技コーチの中西先生も、新しいことにワクワクしている。先日の「打ち合わせ」で、確認し合ったことがある。それは、わたしが目指している「英語指導者としての朗読力アップ」は、日本語での朗読練習が有効だということ。

 中西先生のお話では、オペラを日本人がドイツ語やイタリア語で歌う場合も、日本語でちゃんと歌えて初めて歌えるようになる、ということ。ああ、やっぱりなと、ますます原書プラス翻訳絵本を使うという「バイリンガル朗読」、上達の道として間違っていなかったなという思いを強くした。

 「小学校英語教育」というキーワードで探り当てた、慶応大学の大津教授の研究室のサイト。(英)語力について、それは「人に自分の意志を伝える力」と定義して、現在の日本の英語教育は、「英語力を向上させることだけに関心が集まっている。……(その結果)『英語かぶれ』と『英語オタク』を生み出しているだけ。……『英語力向上エンジニアリング』に陥っている。」
という部分に引き付けられた。そして極めつけは、
「言語直観の利くのは母語」というフレーズだった。

 そうだ!わたし自身、英語でGoodnight Moon
Goodnight Moon』だって、Where the Wild Things Are (Caldecott Collection)
Where the Wild Things Are (Caldecott Collection)』だって読めて、それなりにリードアラウドできる。だが……、それをヴォイスコーチングと翻訳版での演技指導を受けて後に録音し、聴いてみた。

 あれれ「別人」。声まで(自分でいうのもなんだが)艶があるゾ!?母語の強さを思い知った。ずいぶんと、近頃では英語のニュアンスも肌で感じられるようになっていると思ったのだが、深さが母語と違うらしい。その母語でわかったニュアンスが、原書をリードアラウドするときに滲みだす。凄いぞ、この効果。

 1月からは、ワークショップ参加者が実感する番だ。

おとな版リードアラウド@クレヨンハウス、まるで「別人」になった参加者たち

 連休前の金曜日、夜7時からクレヨンハウスで行われたリードアラウド、1Fの小さなテーブル席からはみ出すほどの盛況だった。15人?お忙しいのに、よくぞ……。感謝。

 テキストは、リードアラウドするのに実に使い勝手ののいい、I Forgot to Say I Love YouDon't Forget I Love You
 この日、特に感慨深く思ったたのは「なまりなんか、たいした問題じゃない。伝える気持ちが一番なんだ」ということだった。

 物語の場面、それがどういう物理的、心理的状況なのか。また、登場人物たちのプロフィールはどんなか。これらを考えるのを指導の柱とした。英文和訳ではない、本当の英文解釈である。この日、わたしのちょっとした説明とデモンストレーションで、みなさんが驚くほどうまくなったのである。……もうまるで別人!みなさんが、元々持っていたものを引き出せたという、指導者冥利に尽きる経験をした。

 また、気にする人も多い発音のこと。実はこれ、ほとんど問題なし!伝える気持ちが前面に出ていれば(表現力があれば)、少々のなまりがあっても、ほとんどの場合問題なく通じるから。なまりはかえって、個性的でチャーミングに聞こえるし。

 このリードアラウドで、わたしがやろうとしていること。そのなかで、いままで潜在していたテーマがどうやら見えて来た。「コミュニケーション・スキルをつける」ことらしい。

 生き生きとした表現で英語の本を読めば、英語がおぼつかない子どもたちにも伝わりやすい。表現力=コミュニケーション力なのだ。これが、わたしのような者のちょっとした指摘で、この日のみなさんのように力が倍増するのだから、リードアラウド恐るべし。
 
 次回のおとな版は、1月23日の予定。詳しくはこちら
 

「5年生用の靴」がないように、「5年生用の本」もない。学年ではなくレクサイルで探すぴったりの本

 「5年生用の靴を下さい」といって靴屋に行く親はいなくとも、「5年生用の本を下さい」と本屋に行く親は多い。でも本も、靴と同じく、「サイズ」をいわないことには、ピッタリのものがすぐにみつからない。

 靴の「サイズ」とは、scale、尺度のことである。そして「24.5センチ」とかいうときの「センチ」は、unit、つまり単位だ。わたしが英語の本を紹介するとき、またキッズブックスのブッククラブのレベル分けをするときは、Lexile frameworkと呼ばれる尺度を使って、その本の難易度を示す。そのときの単位が「L」、レクサイルである。つまり、
「サイズ」=Lexile framework
「センチ」=L(レクサイル)
ということ。

 同じ5年生でも、靴のサイズが18センチだったり、24センチだったりするように、ネイティブの5年生の子の本を楽しんで読める力、レクサイル尺度が560Lの子も、1030Lの子もいる。24センチの靴は、足が18センチの子にはブカブカなのと同じで、560L(Sarah, Plain and Tall
『Sarah, Plain and Tall』
)の子が1030LのハリーポッターHarry Potter and the Half-Blood Prince (Book 6)
『Harry Potter and the Half-Blood Prince (Book 6)』
を読んだのでは「頭にブカブカ」、ピンとこないだろう。

 ピッタリの靴をはいてこそ、疲れずに歩け、かけっこもできる。同様に、適した難易度の本を読ませてあげてこそ、意味がわかり、おもしろくなってどんどん進んで読むようにもなるというわけだ。

 

リードアラウド指導者向けワークショップですること:その1

 ……突然書き始めて、それも繰り返しなのだが、日本の子どもと英語の絵本を読むための注意事項について。それは2大注意事項で、
1、選書
2、指導者の読み方(読み聞かせに留まらず、参加型にすること)
である。

 この2点をセットにしたのが、わたしの提唱している「リードアラウド」だ。わたしにとっての2008年は、特に2番目について試行錯誤した年だったと言える。

 リードアラウドは、「英文解釈」の授業のように、日本語に翻訳しながらは読まない。意味をなるべく自然に伝えること、「直接教授」をモットーとする。いわゆる「お勉強」とは一線を引きたい。そのための強力な「武器」が、指導者の演技力だという思いが強くなった。一語一句考え、内容を理解してこそできるのが演技。子どもたちを飽きさせない「武器」でもある。指導者としての演技力を磨くと、本の内容を伝えやすくなると同時に、子どもたちにもその演技コーチが出来るようになる。子どもたちには、演技(読み方)を学ぶことが、その文の理解の助けになる。

 そこで、そういった指導力を高めるため、2007年から独習し始めたのが、演技の基礎でもある「ヴォイストレーニング」。始めてみたら奥が深く、独学ではもどかしく感じた。当たり前だが、調べたら世間にはプロがたくさんいた。そこで、この分野のプロで、リードアラウドの目的を理解し、焦点を絞って教えて下さるヴォイスコーチを探し出した。これが2008年の大きな収穫のひとつである。私自身を「実験台」に、春からヴォイスコーチを受けているが、いろいろな変化(成長!)が自分でも見えてきたのである……。方向は間違っていなかった!

 2009年1月からの指導者向けワークショップでは、そのコーチに専門的かつリードアラウドのためにカスタマイズしたヴォイスコーチングを受け持っていただく……。

(つづく)

 

指導者向けリードアラウド・ワークショップ2009

「Read Aloud Workshop 2009」の参加者を募集します。英語プロフェッショナル向けの少数ワークショップです。1年で別人のような朗読が出来るようになり、指導者としてさらに魅力(実力!)が加わります。お申込みはキッズブックス・ウェブサイトからから。どうぞお早めに。

●目的:
英語教師や指導者自身の朗読力を、発声法と演技力両面から磨き、RA指導のスキルをアップさせる。

●対象:
日本語を母国語とする英語教師。絵本の朗読力をつけたい方。RA指導のスキルアップしたい方。

●講師:
中西健太郎(ヴォーカル・演技コーチ)
大島英美(リードアラウド・インストラクター)

●内容:
初級・中級・上級(大人向け)レベルの代表的絵本5種(英語原書+翻訳版の計10冊)を使い、朗読の実力とRAの応用力を養成します。毎回90分の2部構成となります。
[構成]
 1部 朗読表現のための発声、呼吸法の練習(90分)
   1-1 発声練習
   1-2 朗読、表現練習
   1-3 質疑応答
 2部 原書を使ったRA式表現訓練(90分)
   2-1 使用絵本についての基礎知識、RAに使う意味
   2-2 RA指導、練習
   2-3 質疑応答
 ※第7回は発表・懇談会。各人、得意な1冊を披露。

●教材:
絵本1『Goodnight Moon Book and CD (Share a Story)』『おやすみなさいおつきさま』
絵本2『Where the Wild Things Are』『かいじゅうたちのいるところ』
絵本3『Little Blue and Little Yellow』『あおくんときいろちゃん』(※キッズブックスでは取り扱っておりません)
絵本4『Dog and Bear: Two Friends Three Stories』『いぬとくま いつもふたりは』
絵本5『Grandfather’s Journey (Caldecott Medal Book)』『おじいさんの旅』
 ※教材はキッズブックスで購入できます。
 ※事情により教材を変更する場合がございます。

●スケジュール:
全7回。各回とも13:30〜16:40(10分休憩を含む)
第1回 2009年1月24日(土) 朗読力チェック。目標設定。絵本1
第2回 2009年3月21日(土) 絵本1(review)と絵本2
第3回 2009年5月16日(土) 絵本2と絵本3
第4回 2009年7月18日(土) 絵本3と絵本4
第5回 2009年9月26日(土) 絵本4と絵本5
第6回 2009年11月21日(土) 絵本5
第7回 2009年12月19日(土) 発表会
 ※都合により変更する場合がございます。ご了承ください。
 ※連続参加を前提としたカリキュラムですが、ご都合も考慮します。
 ※絵本はそれぞれ原書、翻訳セットで使います。

●会場:
世田谷区用賀(新玉川線用賀駅下車4分)

●費用:
入会金…3,000円
受講料…9,000円/回(教材費別途)

●申込方法:
キッズブックス・ウェブサイトからお申し込みください。→『Read Aloud Workshop 2009』
定員10名。先着順。
※2009年1月27日現在、定員に達したため募集を締め切っています。ご連絡先をメールいただければ、欠員が出たときにお知らせいたします
受講料は、毎回会場でお支払いください。

●主催:ペイパーウェイト・ブックス

●講師プロフィール:
中西健太郎(なかにし けんたろう)ヴォーカル・演技指導スタジオのコスモスフラワー主宰。東京藝術大学音楽学部声楽科在学中よりオペラで培った声楽と演技力を生かし、ヴォイストレーナー・演技指導に従事。大手芸能事務所やレコード会社より委託を受ける。クラシックをバックグランドとしつつ、テクニックのみに偏ることのない、発声法と表現に対する的確なアドバイスは、多くのプロの表現者から信頼を得ている。
生徒ひとりひとりの個性を尊重し、生き生きと輝いた表現を大切にする指導がモットー。

大島英美(おおしま えみ)英語児童書ディレクター。洋書輸入会社「ペイパーウェイト・ブックス」代表。UCLA卒、クレアモント大学院博士課程中退。日米で子どもから大人までに、各教科を教える。91年会社設立後、事業と並行し、執筆・教育に従事。2004年に「リードアラウド」を発案。学校や書店でワークショップを開催し、メディア等に注目される。著書・訳書に、『キッズ(だけにじゃもったいない)ブックス』(ペイパーウェイト・ブックス)、『おじいさんの旅』(ほるぷ出版)、『ダルシマーを弾く少年』(ポプラ社)、『父親たちの星条旗』(イースト・プレス)など。読売新聞、アエラ・イングリッシュなどにコラムを連載中。