東京国際ブックフェアとブックエキスポ

アメリカ書籍業界の最大のイベントは、毎年1回初夏に開催されるブックエキスポ・アメリカ(BEA)。1992年に国際ショー業者が権利を買い取るまでは、現在もスポンサーであるアメリカ書店協会(ABA)が主催し、ABAコンベンションと呼ばれていた。今年はLAで5月29日から4日間開かれた。このBEAの前身、ABAコンベンションのことを、90年に晴海で開かれた第1回東京国際ブックフェア(TIBF)に行ったときに知った。翌91年から、洋書の買い付けや取材にと「皆勤」を続けている。

第15回目が7月10日から開かれているTIBF
も、BEAと同じ業者の運営だが、出展社数は770社。BEAは2234社で、それからもその規模の大きさがわかるだろう。
BEAは、版権取引のほか、巨大チェーン書店やネット書店に対抗する戦略討論や、情報収集の場でもある。それは、パネル・ディスカッションや、セミナー、講演だったり、パーティ会場での会話だったりする。会場には、出版予定のある大物政治家だけでなく、芸能人が何人もやってくる。クリントン元大統領が自伝を出した年は、彼の講演が大変な人気だった。舞台裏では老いていたが、表に出るとシャッキとスターになる晩年のチャールトン・ヘストンもここで目撃した。今年はマイケル・ムーアが話題だった。新刊の無料配布や、センスのいい販促品の提供があり、旬の作家たちが大挙来場しサイン本も無料で配るなどで、4日間の登録料125ドルもそう高く感じない。
だがなんと言っても、BEA最大の役目は、本の売買の場の提供である。出版各社は、新刊のプロモーションに加え、送料無料や50%に近い特別割引率など特典を付けて、会期中の受注に精を出す。お得感があるから、書店バイヤーたちは売れそうな本を会場で吟味し、かなり集中的に買う。日本の書籍取次会社は、低割引率でも返品や交換を大量に受け、選書までしてくれる。この便利さに慣れた日本の書店には、TIBFはBEAのように買付けの場ではないかも知れない。
BEA会場には、「リメインダー(remainders「残り物」)」と区分された活況な一角がある。ここは簡単に言えば、本のアウトレット売り場で、在庫処分品などわけありの本が、通常の半値近くで仕入れられる、わたしが忙しくなる一角だ。アメリカでも本離れや、巨大ネット書店に客をとられ、書店は苦戦している。そこで対抗策のひとつが、リメインダーを仕入れ、安売りをすることと言われ、成果をそれなりに上げている。アメリカでは、こうして本はリメインダーとして第2のチャンスが与えられ、消費者は安い本が買える。再販制度や商習慣の違いからか、「残り物」はほとんど断裁される日本は、BEAでのリメインダー活況から、何か学べないものだろうか。