2008年コルデコット賞

 1月15日、今朝ALA(全米図書館協会)が、今年のコルデコット賞とニューベリー賞を発表した。ニューベリーについてはまたの機会に述べるが、今日はコルデコット賞について。

 ほーら、言ったじゃない。Selznickは今アメリカを代表する絵本作家のひとりだって。と、「先見の明」を自慢したくなる。なぜなら、さんざん機会あるごとに褒めて来たから。あまりにいいので翻訳までした。貧しく恵まれない境遇に生まれた兄弟の兄弟愛を描いた、詩情あふれる短編小説のイラストがこれ。
The Dulcimer Boy
The Dulcimer Boy』(ダルシマーを弾く少年)
作者:Tor Seidler  イラスト:Brian Selznick

そして、今回の受賞の伏線のような作品で、やはりコルデコット、こちらはオナー賞(銀メダル)受賞作。地道で執拗ともいえる情熱で恐竜実物大模型を作り、19世紀末のロンドン万博で披露したホーキンズ博士の伝記絵本。
The Dinosaurs of Waterhouse Hawkins: An Illuminating History of Mr. Waterhouse Hawkins, Artist and Lecturer
The Dinosaurs of Waterhouse Hawkins: An Illuminating History of Mr. Waterhouse Hawkins, Artist and Lecturer』(ウォーターハウス・ホーキンズの恐竜)
作者:Barbara Kerley  イラスト:Brian Selznick

 もう一作、これはイラストだが、アメリカのアフリカ系で初めてオペラ歌手になったマリア・アンダーソンの伝記絵本。
When Marian Sang: The True Recital of Marian Anderson
When Marian Sang: The True Recital of Marian Anderson』(マリアン・アンダーソンの伝記物語)
作者:Pam Munoz Ryan  イラスト:Brian Selznick
 えんぴつのデッサンもいいけれど、べったりめの色付きもちょっとルソーっぽくて、素朴さがいい。デフォルメして、ちょっと「小人」っぽいのがかわいらしいときと、ちょっと「不具」感があって日本人には「かわいい」と思えないときがあるようだが、わたしにはOK。細密なところ、厚塗りなところ、デフォルメがぎこちない(意図していると思う)ところが、アーティストの朴訥さや誠実さのようで、好感を持っていた。

 そうそう、受賞作は、
The Invention of Hugo Cabret
The Invention of Hugo Cabret』(ユゴーの不思議な発明)
作者:Brian Selznick  イラスト:Brian Selznick
で絵本と読み物の中間に位置させようという実験的なフォーマットの、500ページにも及ぶグラフィック・ノベル。絵だけ、または文字だけでは物語がたどれない。両方で初めて成り立っている。現在、人気が一気に過熱して品切れ。入荷したら、もう少し詳しく書きたい。

 もう1つ「先見の明」自慢はオナー賞(銀メダル)の
The Wall: Growing Up Behind the Iron Curtain
The Wall: Growing Up Behind the Iron Curtain
作者:Peter Sis
Peter Sisの自伝絵本。共産主義だったチェコに生まれて、その窮屈な時代を細かなペン画で著したものだ。手書きによる文章にも、かなりの情報が盛り込まれている。作家の半生と平行して、年少者は絵だけ見て、そして東欧の歴史に疎かった大人は詳細を読んで、20世紀の欧州の歴史の一端を知ることができる。洗練されたイラストでありながら愛らしいのは、いつもどおり。本作では、さらに格別のエネルギーを感じる。