軍人の後ろを歩いていたら

 ダウンタウンで昼食後、徒歩で帰宅途中、後をつけたわけではないが、ずっと軍服を来ている人(軍人でしょう?)の5歩ほど後ろを歩くことになった。

 砂漠での戦争(イラク、アフガニスタン)が長いからだろう、資料によれば、砂漠の自然の風景に溶け込むようにデザインされた、砂色で砂模様の軍服だ。靴もゴールデンリトルバーみたいな色。「過去の批判に答え、自然の風景にはほとんどない黒は、除外した」らしく、黒はどこにも使われていないのが新しい感じだ。

 彼はアフリカ系の若者で、しっかりと大地を踏みしめ歩く。そこにまず、昼休みらしいテイクアウトの昼食を持った会社員が通りかかり、「頑張ったね、イイゾ」と親指を立てながら声をかけた。若者は「ああ、ありがとう」。

 昔の軍服(ベトナム、熱帯雨林系の色)風のシャツを着た60歳代後半くらいのおじさんが、「君もだね?わしもだ」と、自らの出で立ちを指差し仲間のように微笑んだ。
「ああ、そうですね」。彼も微笑み返す。

 さらに歩いて行くと、完全に70歳は過ぎている感じのおじいさん。すれ違う時に、ちょっと顔を引き締め「Thank You」の口を作った。遠くからでもわかる、はっきりとしたThの口とYの口の形が見て取れた。
「……」。黙礼した。

 そして、わたしのアパートのある角にさしかかり、彼は左に曲がり川のほうへ降りて行った。後ろ姿に、まるでHero という言葉が浮かぶのを意識したような、存在感のある姿だった。

 彼がなぜ軍服で歩いていたかは知らないが、もし軍人で、戦争の後遺症で鬱になったりしたら、こうして軍服を着て街を歩くと、心にいいかもしれない。
アメリカは今も、戦争をしている国なのを思い出させる場面だった。

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